スペイン語を勉強する目的として『将来スペイン語で通訳できるようになりたい』と考えている人も多いのではないでしょうか。

多くの人が『スペイン語で仕事をする』=『翻訳・通訳・講師』などと思い浮かべると思います。
この記事では言語の国家資格である『全国通訳案内士』について紹介します。細かく記載されている要項を簡潔にまとめたものですので、実際に出願する際は必ずJNTOの公式サイトで要綱を確認してください。
全国通訳案内士とは
専門性の高い外国語ガイド!?
全国通訳案内士とは報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内)ができる者のことです。
国家資格に合格し、都道府県に登録を行うことで、全国通訳案内士を名乗ることができます。通訳というよりも外国語ガイドと考えるといいでしょう。
専門性が求められる国家資格のため、非常に難関な資格になります。JNTO(独立行政法人 国際観光振興機構)によれば、2020年度全国通訳案内士試験の受験者は5,078人、合格者は489人、合格率は9.6%だということです。
ただし、そのほとんどが英語受験者であり、スペイン語での受験者に限れば、5人しか合格者がいませんでした。
受験者数 | 1次合格者数 | 1次合格率 | 2次受験者数 | 2次合格率 | 最終合格者数 | 合格率 | |
2020 | 129 | 15 | 11.9 | 17 | 52.9 | 9 | 5.1 |
2019 | 190 | 19 | 10.2 | 22 | 81.8 | 18 | 9.5 |
2018 | 193 | 32 | 16.8 | 32 | 71.9 | 23 | 11.9 |
2017 | 236 | 36 | 15.6 | 40 | 90 | 36 | 15.3 |
2016 | 253 | 66 | 26.4 | 68 | 86.8 | 59 | 23.3 |
ここ5ヵ年のスペイン語受験者の結果です。
特に、1次試験の合格率が20%以下であることから筆記試験の難易度が想像できますね。合格者はその年度の2月上旬の官報に掲載されます。
全国通訳案内士と地域通訳案内士との違い
特定の地域内において、報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内)ができる、地域通訳案内士という資格もあります。
地域通訳案内士として活動をするには、各自治体が行う研修受講を通じて登録をする必要があります。
地域通訳案内士は、全国通訳案内士が大都市に集中している現状を踏まえて、新たにできた制度です。
求められる外国語レベルは全国通訳案内士よりも若干低く設定されており、その反面、その地域の歴史や地理、文化により精通していることが求められます。
令和2年7月時点の制度導入地域は以下の通りです。地域によって、対応している外国語が異なります。ぜひ、お住まいの自治体を調べてみて下さい。
平成30年1月4日の法改正により、資格を有さない方であっても有償で通訳案内業務を行えるようになりましたが、その場合、全国通訳案内士に類似する名称を使用することはできませんので注意して下さい。

試験内容
**以下からは試験科目『外国語』をスペイン語として解説していきます。試験は筆記試験(1次試験)と口述試験(2次試験)の2つが設けられています。
筆記試験
試験科目は上記の5つになります。筆記試験の合否判定については、科目ごとに合格基準点を設定し、すべての科目について合格基準点に達しているか否かが判定されます。
科目 | 試験時間 出題形式 |
出題内容 | 合格基準 |
スペイン語 | 120分 記述式 |
読解問題2題(40点程度) 和訳問題1題(20点程度) 西訳問題1題(20点程度) 外国語での説明問題1題(20点程度) |
70点/100点 |
日本地理 | 40分 マークシート |
日本地理についての主要な事柄 – 問題数は40問程度 |
70点/100点 |
日本歴史 | 40分 マークシート |
日本歴史についての主要な事柄 – 問題数は40問程度 |
70点/100点 |
一般常識 | 20分 マークシート |
現代の日本の産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄 – 問題数は20問程度 |
30点/50点 |
実務 | 20分 マークシート |
観光庁研修のテキスト内から – 問題数は20問程度 |
30点/50点 |
高い語学力だけでなく、歴史や文化などの専門的な知識も求められます。
確認 筆記試験過去問一部(JNTOの外部サイト)
試験科目の免除
条件を満たす受験者は、出願の際に試験科目の免除申請をすることができます。
試験科目 | 免除条件 | 添付書類 |
スペイン語 | 西検1級 | 合格証書もしくは合格証明書のコピー |
DELE C1 DELE C2 DELE Superior のいずれか |
Diplomaのコピー | |
日本地理 | 総合•国内旅行業務取扱管理者 一般•国内旅行業務取扱主任者 一般•国内旅行業務取扱主任者認定証保有者 のいずれか |
合格証書のコピー |
日本歴史 | 歴史能力検定日本史1級 歴史能力検定日本史2級 のいずれか |
合格証明書のコピー |
大学入試センター試験* 日本史B60点**以上 | 試験成績通知書のコピー 入試センターの得点を示す書類 のいずれか |
|
一般常識 | 大学入試センター試験* 現代社会80点**以上 | 試験成績通知書のコピー 入試センターの得点を示す書類 のいずれか |
*現在は大学入学共通テストに名称が変更されています。
**2015.4.1以降に取得した得点
免除のための条件をみて貰えば分かるように、なかなかハードルは高いでしょう。また、前年度の合格した科目については当該科目を免除できるので、積極的に申請していきましょう。
口述試験
口述試験は筆記試験を合格した方のみ受験資格が得られます。試験のイメージとしては『スペイン語+観光資源についての知識をもって、実際に外国語ガイドする』 という感じです。
口述試験の出題内容としては、観光資源に関連する地理や歴史、文化についての事柄のうち、外国人観光客の関心の強い事柄です。
参考 口述試験レポート(外部サイト)
質疑応答問題では、試験官が読み上げる日本語をスペイン語に訳し、その問題文に関連した質疑応答をしていくものです。読み上げる問題内容については、メモを取ることを認められています。
テーマプレゼンテーションでは、提示される3つのテーマから受験者が1つを選び、スペイン語で説明を行い、そのテーマについて試験官とスペイン語で質疑応答を行います。
評価項目と合格基準
具体的な評価基準については不明ですが、上記の項目について7割に達していれば合格となります。
出願要項には『原則として7割』と記載がありますので、これはおそらく、例えば5項目中3項目が完璧だけれど、他の2項目が極端にできていない場合は、7割を超えていても不合格の可能性があるということだと思います。

どれかがズバ抜けてできているではなくて、平均的に高評価を取る必要があると解釈しておくといいかと思います。
試験スケジュール
参考までに2020年度の流れを紹介します。
上の図を見たら分かりますが、6月に申し込み▶︎8月に筆記試験▶︎12月に口述試験▶︎2月に最終発表ということになります。
試験会場
筆記試験と口述試験それぞれで試験会場が分かれています。スペイン語に関しては試験会場は以下の中から選択となります。
筆記試験 | 口述試験 |
東京近郊 大阪近郊 福岡市 札幌市 仙台市 名古屋市 広島市 沖縄県 |
東京近郊 |
他の外国語および2ヶ国語受験をする者は、選択できる試験会場が異なりますので、各自出願要項を確認して下さい。
注意すべき点は、出願後の受験地の変更はできないことです。出願が完了した後に送られてくる受験票に試験会場の記載があります。
対策問題集・参考書
JNTO公式サイトにて、過去5年分の過去問が公開されていますので、まずはそちらを全てダウンロードして問題の出題傾向と対策の仕方を考えてみましょう。
本試験は5科目と多岐に渡りますので、専門の問題集での対策が必須となるでしょう。
表紙 | 書籍名 | 価格 |
![]() |
全国通訳案内士スペイン語過去問解説 | 3,630円 |
![]() |
全国通訳案内士試験 「地理・歴史・一般常識・実務」直前対策 |
2,640円 |
*価格は変動するので、必ずご自身で確認ください。
以上です。
この記事では国家資格である『全国通訳案内士』について説明してきましたが、スペイン語の学習目的の一つとして、この難関資格に挑戦することを検討してみてはいかがですか。単に、DELE C1,C2に合格する!と設定するのではなく、その後それを用いて何をしたいかを明確にすれば、学習のモチベーションも上がります。
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